星野さん と 中坊さん
今日、阪神タイガースは日本シリーズ第一戦を行いダイエーに敗れた。
テレビの一場面をチラっと見た限りでは映っていたのは星野監督が笑っている顔だった。勝敗が決していない時でトラ側が失敗した時だが、目下、日本人の人気度ナンバーワンと思われる星野さんだ。その表情もなかなかよかった。
タイガースが優勝した頃、すでに星野さんの母堂は逝去されていたが、彼はその葬儀に行かず野球場にいて監督の責任をまっとうされた。 ひとり監督のその胸中はいかばかりであったろう。
優勝した明くる日にはスポーツ新聞数紙に阪神優勝御礼の全面広告を出した。ファンの皆さまへと数千万を出してその気持ちを表した。
男仙一、とファンやメデアがはやしていたあの言葉は、今はみられなくなった日本男子の理想像だったのだろう。
オーナーに対して強い発言力をもち、チームを変えた名監督。しかし、最後には亡き母上のためにファンのために、純粋に彼は布施をされたのだと私は思った。
そうこうする内に今度は辞任表明だ。なんというすっぱりとした去り際であろうか。原監督を解任した巨人のオーナーをみればこれがこの世界の現実であると彼は達観されたのだろう。
まさに、三界は火宅なり。
漱石が第一義という言葉をもってあらわした倫理観、世の正義感、そうしたものを今の世に見ることは少なくなったが、私の心から尊敬してやまない中坊弁護士のことがこのところしきりと思われる。
中坊さんは誰も成し得ない火中のクリを拾われたが為にとんだことになってしまった。以下がニュースで知った事柄である。
中坊公平弁護士は、整理回収機構の社長だった97年から98年にかけて、旧住専に負債があった大阪、不動産会社の債権回収で土地を売却した際に、ほかの債権者に実際より低い金額を伝えたとして、不動産会社側から詐欺容疑で刑事告発されていた。
10日午前、会見した中坊弁護士によると、「私のほか、部下が東京地検の取り調べを受けるに至った。厳しい回収姿勢を求めた私の責任だ」として、46年にわたった弁護士資格を返上することを決意したという。
ああ、中坊さん!
私はここでも、ひとり中坊さんの胸中を思わずにはいられない。
三界は火宅なり。
法華経の比喩品にある仏のことばを反芻するばかりである。
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