気に入らぬ風もあろうに柳かな
出光美術館はせんがい和尚の禅画蒐集でもよく知られている。
タイトルにした俳句は、堪忍柳画賛(かんにんやなぎがさん)という掛け物に書かれている賛である。
せんがい筆 江戸時代 紙本墨画 「気に入らぬ風もあろうに柳かな」
PCなら即座にお気に入りに保存ということになろうか。私はこの句を見て、ああ、そうなりたいものだと思った。けれども、そうはなれない自分に微苦笑する。
今日は精中忌という裏千家宗家・三大忌の行事が執り行われた。第十一代玄々斎宗匠の遺徳をしのび全国から同門社中の方々が参集された。
恒例になっているけいこ場席という茶席をもたせていただく私ども直門会会員は、ご奉仕の一日を過ごした。
今回、私の属する10人程度の班は道具の係りであった。季節の取り合わせを協議し、道具を持ち寄り席を構成する。何度かやり直し、よりよいものへと相協力してゆく。役割分担も自ずと決まってくる。80歳とはとても見えない品格ある大先輩がいらっしゃる。70歳の方の後はそれぞれ60代、50、40、30代と続く。
若い人たちは点前とお運び。年くった者が半東の役。これらは順番である。私が半東に出たのは朝から3度くらいだったろうか。
最後のころ、お家元がご家族とごいっしょにお越しになった。
席中の会員めいめいの持ち出しの道具と取り合わせの雰囲気をていねいにご覧になる。そして水屋につとめる皆のために必ず水屋まで足を運んでねぎらわれる。周囲への気配りはたいへんなものだ。
拝見のとき、茶杓をご覧になりはがらお家元はおっしゃった。
「これは私のだな。」
カメラを手にして席に入っていった私に
「この茶杓は、中宮寺の時のだね。」
と、ほほえんで言われた。
「はい。たまやなぎ のご銘を、いただきました。」
個人的なことになり恐縮しつつも、感激であった。
ほんとうによく覚えていてくださったと思う。
昨日、拙掲示板に、三河娘さんから最新の書き込みがあり、それは次のように書かれていた。
「その中でも一番の感激は、多満柳のお茶杓を、手にとって拝見させていただいたことでございます。その景色は、まさに床に掛けられた淡々斎様の風(「松風隔世塵」)に、そよぐ翠の柳でした。」
注をつけるならば、茶杓はごま竹でいく筋も柳の葉が垂れている景色なのである。
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