ご対面!です 炉・流し点ての点前
今日はご宗家の槍の間でお稽古をさせていただきました。指導は阿部業躰先生。
壁床に坐忘斎家元の横もの。「臥月眠雲」掛け花入に利休梅。雪柳。
ここは淡々斎がいらした頃、時計の間と呼ばれていたそうです。当時古い時計が柱に掛かりそれを見物に来る人があったとか。時代とともにどの家々にも時計が普及し珍しくなくなって、その呼び名もなくなったのでしょう。
盆香合、茶碗荘(かざり)、と点前がありまして客はふたり。私は正客で濃茶をいただきました。縁高(ふちだか)に「水かがみ」という銘のじょうよう饅頭。俵屋製。お茶は小山園。
「臥月眠雲」とは禅の言葉でしょうね。月に臥し、雲に眠る。ではそのこころは? 「野宿同然に月に照らされて臥し、夜霧に包まれて眠る」それは、「乏しくきぴしい条件に耐えて修行にはげむ」こと。これは 芳賀幸四郎氏の解説なのですが、分かりやすいと思います。
阿部先生との会話。
「先生、このお軸ですが、お家元の眠という字のつくり。最近お書きになる花押(かおう)によく似てるような気がします。」と申しますと、「さあ、どうでしょうか。」と。
まあ、私の推測に過ぎないのですが、なにごとも出典というものがございますね。花押にもきっとあると思います。前のお花押は忍び達磨のような感じでしたが、この度のは打って変わってスマートです。 私は、眠の字に、利休さまの実子である眠翁道安(みんおうどうあん)を思い浮かべます。
閑話休題。
客が済むと、点前の順番でした。私は流し点てをお願いして客お二人。小ぶりの瀬戸水指。休雪の萩茶碗。利休型中棗。茶杓は淡々斎の形のものを選びました。建水に竹蓋置き。柄杓。干菓子は稚児ざくらにわらび。水屋詰めの若手が準備してくださいました。
順序。
水指を炉の右、カン付中央にあわせるようにして置く。棗と茶碗をもって点前畳正面から居前に向きを変え、通常水指がある時と同じようにナナメに炉に流して置く。 建水をもち、炉正面に坐る。
ここが流し点ての居前とする。蓋置きは水指前に。柄杓は蓋置きにまっすぐに引く。釜に入れたら炉縁外隅ねらいで置く。 茶を入れ茶を点てる。二人の客に茶を呈し、客からお仕舞いの声がかからなかったのでもう一碗点てる。正客はお仕舞いをの挨拶をせず、主に茶をすすめるように計らう。 亭主相伴ということになり、正客は菓子器をもって水指横に置く。
主は正客の「どうぞご自服で」の挨拶に応えてから、水を一杓釜にさしておく。一呼吸。 主は客付(炉ぶち右外隅を膝中央に)に向く。菓子器を押し頂いて正客の配慮に感謝し、菓子は遠慮する。菓子器の向きを変えておく。この時は茶碗が定坐に出されている。
その茶碗をとって主は客付にて膝前に置き、茶をいただく。 この後、流し点ての場合は、主は客にまた茶をすすめ、客もそれを受けてゆったりとした時間をすごすことも可能。
拝見の声にて、棗を炉ぶちと水指の間、外炉ぶちと水指の間2等分した位置に置き、その下に茶杓を置く。
まとめ。
◆ 流し点ては炉で行う点前が古くから考案され、行われていた。
◆ 風炉の流し点ては炉・流し点てから円能斎があらたに考案されたもの。
◆ 点前はすべて風炉が基本で炉はのちに出来たものだが、例外はこの流し点てである。
◆亭主相伴は通常の場合、亭主が茶を飲むことで終了となるが、流し点てのみ、再度客にすすめることができる。
◆ 主客が真正面から向き合うのは流し点てのみ。居前のあり方として親しみがある。
◆ これは基本が出来ている、いわば巧者の点前である。
以上、習ったことをメモしてみました。間違いを書いているかもしれません。意のあるところを汲んでいただければ幸いです。
「このお点前は、主客が真正面から向き合う、気の合う人にはとてもいいお点前ですね。」
「うん、昔は、見合いにいいと言ってた。今は言いませんが…。」
「そうだったのですか。今ならテレビでいうみたいです。ご対面!って」
そうそう、お茶杓の問いに答えて私はこんな風に申しましたよ。
茶杓は、淡々斎の「ともどち」でございます。
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コメント
宗恵様、ハンナ様、甘党様
コメントありがとうございます。皆さまお点前がお好きで熱心でいらっしゃいますね。こちらのほうがいろんな意味でお恥ずかしい状態です。せめて帰宅してから業躰先生のご指導を忘れないよう、書きとどめる位しかできないのです。 以前は毎月自宅の小間で茶事を行っていたのに今ではもう…皆様から元気をいただきましょう。
投稿: tsubakiwabisuke | 2007年4月15日 (日) 16時00分
「月に伏し、雲に臥す」とは、そのように、厳しい言葉だったのだなと、改めて感じました。実は、きちんと知るまでは、「いずれの場所にも、宿を求めることは出来る(だから、世俗の欲を捨てなさい)」という意味だと勝手に解釈していたのです。無知とは恐ろしいですね・・・
炉の流し点・・・「お見合い向き」というお話が出るほど、和気藹藹とした雰囲気が伝わります。その雰囲気を出せることこそ、巧者の集う場ならでは、なのですね、まだまだ手先のことで失敗している自分には程遠く、ただ、あぁ、素敵だなぁと思います。
本日も、また、ありがとうございました。
投稿: 甘党 | 2007年4月11日 (水) 00時49分
炉の流し点ての解説ありがとうございます。「臥月眠雲」・・
昨年7月東京ゼミ前席に淡々斎宗匠の富士画賛にこの言葉がかかれておりました。その時のメモに「つきにふしくもにがす」とあります・・
乏しくきびしい条件に耐えて修業にはげむこと・・意味がわからなかったのですが今回わかりました。ブログをプリントして勉強します。
投稿: ハンナ | 2007年4月10日 (火) 12時25分
流し点…久しぶりにお点前したくなりました。
我が家には炉がなく残念。
月一回の奥伝のお稽古だけとなり、寂しいです。
置炉で夫相手にお茶を点ててみようかしら…。
阿部先生の貴重なお話、
お聞かせいただきありがとうございました。
投稿: 宗恵 | 2007年4月10日 (火) 12時19分