岡倉天心著 千宗室序と跋 浅野晃訳 『茶の本』 のレビューを

対訳・茶の本 (ペーパーバック)
岡倉 天心 (著), 浅野 晃 (翻訳), 千 宗室 (著)
『茶の本』は、1906年(明治39年)、ニューヨークの出版社から出版された岡倉天心の英文の著書であることを、ご存知の方は多いはずです。
天心の英文の著書には、「東洋の理想」「日本のめざめ」「茶の本」と三部あり、これらはいずれも外国の読者に向けて書かれたのでした。
ヨーロッパの各国で翻訳され高い評価を受け日本へ逆輸入された天心のエッセイですが、わけても人気が高い「茶の本」は何人もの訳者によって次々に和訳されました。
しかし、名訳として知られた角川文庫版の浅野晃訳が昭和45年に絶版となり、寂しく思っていましたところへ、講談社の英断によって再び世に出たことは喜びにたえません。(1998年3月第1刷発行)
本書は、千宗室(鵬雲斎)家元の序文・跋文をもって、原文と浅野晃訳の対訳で構成されており、岡倉天心の警醒の心を現代に伝えるに、この上ない最高の書物だということができます。
家元の序文に、天心と裏千家第11代玄々斎の共通点を解かれているのも説得力があり注目されるところです。
旧海軍の特攻隊員でもあった家元は序文の最後に次のように結語されています。
この本の終章で、天心は千利休の死について素晴らしい一節を残している。千利休は茶の湯を大成した人物であり、私は彼の残した偉業を十五代家元として今自分が受け継いでいることを誇りに思っている。死は、と天心は言う。それを単に否定的な概念と考えるべきではない。「美しいものとともに生きたものだけが、美しく死ぬことができる。」と。利休の死から400年がたち、茶の湯の歴史を振り返り、さらに21世紀へと思いを馳せる今こそ、もう一度こ『茶の本』に目を向けたいものだ。
十五世 千 宗室
京都にて 1989年10月
作成日時 2007年04月06日 18:54
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これはミクシイのコミュにレビューとして書いたものです。
私の管理する茶道のコミュニテイは、参加メンバーが増加して現在、6、860人になっています。
新会員が自己紹介をしてくれますが、一様に、こんな書き込みしています。
「裏千家のお茶に魅力を感じています。」
「もっともっと、知識を得たいと思います。」
「これから一生懸命」精進するつもりです。」
初心とは、本当にいいものですね。
この本のレビューが少しでもお役に立てれば望外の喜びでございます。
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拙サイトに掲載している旧作に、岡倉天心について書いたものがございます。
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コメント
宗恵様
勉強会をお友達とご一緒になさるって若々しくていいですね。
ひとりで熟読するのもいいですけれど、気の合う人と意見交換しつつ読み進めると新たな発見があるかもしれませんね。鎌倉漱石の会というのもその都度講師をお招きして開かれる研究会&親睦会のようなものです。今月29日に行われますのよ。
投稿: tsubaki wabisuke | 2007年4月 7日 (土) 20時59分
『茶の本』のご紹介をありがとうございます。
この本を「原文で読む」という勉強会をやりたい…
と思ってから…10年以上たってしまいました…。
まずはこの翻訳本での勉強会を始めてみようと思います。
と、言うは易しです…。
投稿: 宗恵 | 2007年4月 6日 (金) 21時26分